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医療法人社団やまと洋光会 泉の森クリニック
〒242-0005
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めまい


めまい

多くの方はめまいが起こるとそれは頭の中で起こったと考えるのですが、めまいの大半は耳の病気で起こります。耳には、「聴く」ことのほかに、身体のバランスを保つための平衡機能に関する働きを持っています。

人間は無意識のうちに、自分が空間に対してどのような位置にあるかを察知して身体のバランスを保っています。「耳(内耳)」からの情報と、目から入る「視覚情報」、筋肉や皮膚、足にかかる重力などからの「深部知覚」の3つの情報が脳を介して密接に連携しています。これらのどこかに異常をきたすとめまいが生じます。大きく分けると、周囲からの情報を感知するセンサーの異常と、そこからの情報を統合している脳の異常の2つになります。

「視覚」や「深部知覚」に障害が起こった場合は、フワフワするめまいを感じたり、姿勢が安定しないなどの症状が起こりますが、グルグル回転するような強いめまいは起こりません。多くのめまいは実は内耳の異常が関係しています。

症状として起こっているめまいが、内耳性のめまいであるかどうかの判別のためにも耳鼻科を受診してください。「気を失う」、「手足がしびれる」、「ろれつが回らない」、「頭が痛い」などの症状を伴うときは脳の病気を疑う必要があります。脳血管障害である脳梗塞・脳出血・脳腫瘍が代表です。


めまい

内耳による平衡機能の役割 内耳性めまい
めまい診断のながれ めまいの治療
メニエール病 良性発作性頭位眩暈症
内耳性以外のめまい

内耳による平衡機能の役割

内耳は、聞こえをつかさどる蝸牛と、バランスをつかさどる前庭の二つで構成されています。前庭では、頭の位置やその動きの情報を主に察知して体のバランスを保っています。これら情報に異常やズレが生じるとバランスがくずれ、めまいが起こります。
このズレは、精神的なストレス、肉体的な疲れ、高血圧・低血圧などの血行障害、ウイルス感染、コンピューターの画面を見続けることによる眼の刺激、肩や首の凝り、など間接的な原因はたくさんあります。
前庭は三半規管と耳石器で成り立ちます。

三半規管は、リンパ液で満たされたチューブ状の構造をしています。水平方向の回転を感知する「外側半規管」、垂直方向の回転を感知する「前半規管」・「後半規管」の3つのチューブが球体の耳石器に接続されています。この3つのチューブは絶妙の角度でお互いが離れていて、3次元の空間を感知できるようになっています。頭が動くとチューブの中のリンパ液が動きます。それぞれのチューブには膨大部といってリンパの流れを感知するセンサーがあるのですが、そのセンサーの細胞がリンパの動きを感知して電気信号に変換し、脳へ送られます。センサーの細胞には、蝸牛と同じように毛が生えています。

耳石器には、その名の通り石が入っています。カルシウムで出来た小さな石です。運動によって頭が傾くと、この耳石がずれます。耳石器の感覚細胞がこのずれを感知して電気信号に変換し、脳に送ります。これにより重力に対して体がどのように傾いているかを察知する事が出来、バランスをとることが出来るのです。
体が上下しても周囲の景色が揺れて見えないのは耳石器が垂直運動の情報を目に伝えて連携しているからです。人間には意識しなくても、素晴らしい手ぶれ防止機能が付いているのです。


内耳性めまい

内耳の障害が原因で起こる病気としては、内耳の中のリンパ液の組成が変わり浮腫んでしまうメニエール病、三半規管のセンサーに耳石やゴミが異常な刺激をして起こる良性発作性頭位眩暈(めまい)症、内耳からの情報を脳に伝える前庭神経が炎症を起こしてしまう前庭神経炎などがあります。

三半規管と耳石器は蝸牛と隣同士にあるため、両方が同時に障害を受ける病気もあります。内耳が原因のめまいの中には耳鳴りや難聴といった聞こえに関係した症状を伴う事があるのはそのためです。メニエール病はその代表です。ほかにも内耳の炎症や血流障害が原因でおこる突発性難聴や、ヘルペスウィルス感染が原因で起こるハント症候群も、めまいと難聴が一緒に現れる病気です。

これらの病気の中には、時間が経つと治りにくくなるものもあります。「めまい」だけだと思っていたら、気がつかないうちに「難聴」も併発していたという事も珍しくありません。早目に耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
めまいは、車酔いと同じ状態ですので嘔吐、下痢などがおこることが多くあります。めまいの時に嘔吐したことで、重症だと思いがちですが、身体の反応としてはよくあることですのでご安心ください。


めまい診断の流れ

問診
めまいの診療で一番大切なことは問診です。問診では、どういうタイミングでめまいが生じるのか、いつから起こっているのか、どのように治まるのか、めまい以外の症状があるかなどを伺います。

眼振検査
特殊なメガネを装着して、眼振検査を行います。
「眼振」とは、自分の意志に反して眼球が左右方向へ激しく動くことを言います。病気以外でも見られます。例えば、電車の窓から景色を眺めているときなどに、眼球が左右に揺れて動いています。
内耳が原因のめまいでもこの眼振が生じるため、眼振検査でこの有無を確認します。

聴力検査
聞こえの異常や耳鳴などがある場合は、聴力検査も行います。
症状がめまいのみでも、隠れた難聴がある場合を想定して聴力検査を行う必要があります。

重心動揺検査
体のバランスを調べる検査です。開眼・閉眼時で行います。
目を閉じて足踏みしてもらう検査なども行います。



中枢性疾患の除外には、他の脳神経症状がないか神経学的診察も欠かせません。体のバランスを調べる検査で小脳や脳幹の障害が発見される場合があります。
必要に応じて 頭部MRI検査(他院に依頼)や脳神経外科受診をお勧めする場合もあります

検査費用のめやす(初診3割負担 薬代金別)

・診察+眼振検査+聴力検査 … 約4,000円
・診察+眼振検査+重心動揺検査+聴力検査 … 約5,500円
・診察+眼振検査+重心動揺検査+聴力検査+耳鳴検査 … 約6,500円

めまい症のうちはっきりと病名を診断できるのは、とても少ないのが現状です。何度か検査を受けるうちに「やっぱりそうだった」と診断できることもあれば、なかなか診断に至らないこともあるのも実情です。


めまいの治療

強い発作で嘔気が強く、薬を飲む事も出来ない時は安静の上でめまい止めの点滴や注射を行います。内服が可能であれば、めまい止め・利尿剤を中心に抗不安薬や循環改善薬・ビタミン剤・漢方薬などを組み合わせて使用します。
発作の初期に上手にめまい止めや抗不安薬などを用いることで、大きな発作の予防や症状の軽減を図る事ができます。

めまいにはストレス・睡眠不足・疲労・ホルモンのバランス・加齢などが複合的に関与していると考えられており、薬による治療だけでは根本的な治療にはなりません。「薬によって症状を抑える事が出来る」事で少し安心しつつ、ゆっくりとストレスの原因を見つめ直し、生活習慣を正すことが必要です。

大きいめまいのあと、ふわふわするようなバランスの悪い状態が続く方患者さんの場合は、内服と同時にリハビリ療法を行っていきます。リハビリ療法(運動療法)はめまいの治療の中で特に重要な治療法です。内耳性のめまいの場合、片方の内耳機能が低くなっても反対側の内耳や脳が調節して、全体のバランスをとりなす(代償機能)ようになります。リハビリはこれを促進します。リハビリはちょっと辛いものです。かえってめまいを起こしてしまったり、症状が悪化してしまったりと不安な気持ちになる場合もあります。焦らずにゆっくりとリハビリに向き合いましょう。


メニエール病

メニエール病の原因は、内耳の「内リンパ水腫(内耳のリンパが増え、水ぶくれの状態)」です。水腫が症状を引き起こすことはわかっていますが、なぜ水腫が起こるのかは、まだ明らかではありません。

めまい発作のおこり方としては、片側の耳のふさがった感じや、片側の耳鳴りで気が付くことが多く、耳の症状に気づいた後にめまいが起こります。めまいの持続時間は10分程度から数時間程度であることが多く、数秒〜数十分程度のきわめて短いめまいが主である場合、メニエール病は否定的です。発作が起きているときは、聴力検査にて低音域の難聴を認めます。めまいは、ぐるぐるして動けないめまいから、ゆらゆらする、なんとなく視点が定まらないなど人によって差があります。

治療は、むくみを抑える利尿作用のある薬剤を内服します。聴力低下が著しい場合はステロイド剤を使用することもあります。
治療をして改善したとしても、発作を繰り返すうちに徐々に聴力が低下していくという危険性もあるため、毎回、きちんと耳鼻咽喉科で検査と治療を行うことが重要です。

メニエール病には厳密な診断基準があり、それをもとに診断します。めまい発作が一度だけでは「突発性難聴」とは区別できません。回転性めまい・難聴・耳鳴りなどを伴って繰り返して起こすことで、「メニエール病」と診断されます。それ以外は「メニエール病非定型例」と診断します。というのも、内耳には�@聞こえをつかさどる蝸牛と、�A平衡機能をつかさどる三半規管と耳石器があるからです。

この両方もしくはどちらか一方が強く水ぶくれになるかにより症状が異なります。蝸牛が強く水ぶくれになれば、めまいは感じず難聴だけを自覚します。水ぶくれが弱ければ難聴ではなく、「耳が詰まった感じ」や「耳鳴り」、「音が響く感じ」となります。反対に三半規管・耳石器が強く水ぶくれになれば、難聴や「耳が詰まった感じ」などは感じず、めまいのみを自覚します。

メニエール病の根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられています。


良性発作性頭位眩暈(めまい)症

内耳の前庭という場所にある耳石がはがれて半規管の中に入り込むことによって、回転性めまいがおこる病気です。

前庭には炭酸カルシウムでできた耳石(じせき)があり、頭の傾きに応じて耳石が動くと、「傾いている」という信号が脳に送られます。耳石は常に代謝していて、はがれた細かいカスがたまっていきます。これは浮遊耳石ともいわれ、何かの拍子で三半規管の中に入り込んでしまうことがあります。浮遊耳石が三半規管のどこに入り込むか、または入り込んだ後の動きによって、めまいを誘発する動きや頭の位置、めまいの継続時間が異なります。最も入り込みやすいのは後半規管です。これは、人が横たわると後半規管が耳石のたまっている卵形嚢(らんけいのう)よりも低くなるためです。耳石が半規管内のリンパの流れに異常を生じてめまいをおこすと考えられています。

主な症状は、ぐるぐると目が回る、フワフワするなどのめまいで、吐き気を伴うこともあります。めまいが生じやすいのは、寝返りをうったとき、寝ている状態から起き上がったとき、急に後ろを振り向いたとき、急に上を向いたときなど、頭を大きく動かしたときです。めまいはたいてい、10〜20秒ほどで治まります。起床時や寝返りをうつときなどに急に頭の位置を動かすことでめまいがおきますが、めまいをおこす頭の位置(めまい頭位)が人によってきまっているのが特徴です。めまい頭位をとり続けると、めまいは通常1分以内におさまります。

治療は、めまい止めの薬、安定剤などの内服治療が中心ですが、一番大事なのはリハビリです。急性期は安静にしている方が良いのですが、ある程度症状が治まってきたら、積極的に頭や首を動かす運動をすることが重要です。めまい頭位を繰り返すことでだんだん慣れが生じてめまいが起きにくくなります。めまい症状は時間と共に回復することがほとんどです。

良性発作性頭位めまい症はめまいの約60%にも上るといわれています。このめまいは、長時間同じ姿勢でいることが原因で起こると考えられています。思い当たる方は、ときどき意識的に頭を動かして、予防、改善に努めましょう。


内耳性以外のめまい

多くのめまいは内耳の異常が関係しています。とはいえ、患者が「めまい」とで訴える病態には、内耳性以外にもいくつかの病気を念頭に置かなくてはいけません。

聴神経腫瘍
内耳の奥にある聴神経は聞こえの神経である蝸牛神経、平衡感覚の神経である前庭神経から出来ています。
聴神経腫瘍はこの聴神経そのものにできる良性の腫瘍です。ほとんどが片側に出来ます。腫瘍そのものは良性ですが、非常にゆっくりとしたスピードで大きくなり、聴神経を圧迫して、徐々に聴力の低下、耳鳴、めまいなどの症状が出現します。片側の耳の聞こえが徐々に悪くなり、めまいの発作を繰り返す場合は、聴神経腫瘍の可能性を疑って、頭のCT、MRIなどの検査を行う必要があります。
脳神経外科への紹介をいたします。

起立性調節障害
学生時代、朝礼の時に気分が悪くなって倒れた人を見たことはありませんか?これは起立性調節障害によるものです。この状態からめまいを起こす場合もあります。体調を整える自律神経が働かず、体を動かしたときに、血圧の調節がうまくいかなくなりめまいを引き起こします。浮動性めまいや立ちくらみの訴えとなることが多いのですが、回転性めまいを感じる場合もあります。臥位と立位の血圧を比較する起立試験で診断を行います。

頸性めまい
頸部の回転または伸展によって様々なめまいを訴える場合この疾患を疑います。一定の方向に首を動かすことによりめまいが現れることもあります。
一因としては、椎骨脳底動脈循環不全があります。首を通り脳へ血液を運ぶ椎骨脳低動脈が循環障害を起こしたと考えます。
治療として、頸部の理学療法(ストレッチ・マッサージ・牽引・カラー)が有効な場合、整形外科との連携が必要になります。

心因性めまい
不安感やパニックなどが根底にあるめまいです。
めまいの起こり方は様々で、目の前が真っ暗になる(眼前暗黒感)、頭重感、肩こり、不眠、気分がすぐれない、脱力感など自律神経症状や精神的不定愁訴を伴うこと多いのが特徴です。耳鼻科的めまい検査での異常は認められず、心因性反応が強い場合は、精神科・心療内科への受診をお勧めする場合もあります。
また、内耳性めまいが継続する場合、軽快しないことがストレスとなり、うつ症状、不安症状を呈することがあります。抗不安薬・抗うつ剤の投与に加え、精神科・心療内科との連携も必要となります。